周囲を魅了する魔性のお年寄り
青森でリンゴ農家を営む斎藤正蔵・ヨネ夫妻は齢80超えの老夫婦。
その正蔵じいさんがふと「もし若返ったら?」と漏らした。他愛ないけれどもあり得ない、そんな願いが現実になるところから始まる、ほんわかふんわり日常系マンガなんです。
若返った2人は誰もが羨むほどの美男美女。本人達の自覚とは裏腹に周囲の人間は大興奮します。
長男の嫁と孫は生粋のイケメンアイドルオタクで、若返ったじいさんの端正な顔にもうメロメロ。孫に至っては、ばあさんに向かって「おばあちゃん、おじいちゃんちょうだい」とまで言い出す始末。孫にモテて嬉しいじいさんは満更でもなさそうです。
イケメンじいさんの快進撃はとどまるところを知りません。知らず知らずに周囲のばあさま連中を自身のファンクラブ、いや親衛隊に作り変えてしまいます。ゲートボールに興じれば黄色い(?)声が飛び交い、ラジオ体操をすればファンサうちわがチラつきます。
近所の清掃活動では先んじてゴミを拾われてしまうのでゴミが拾えない。運動会では差し入れが多すぎて腹がはち切れそう。ばあさまたちの重すぎる厚意というか好意に、タジタジのじいさんに笑いが禁じえません。
ばあさんもその儚げな美貌と母の如き慈愛で、周囲を無自覚に籠絡していきます。昔馴染みのじいさまたちは、ばあさんにお世話してもらえるだけで心臓発作を心配してしまうほど血圧が上がってしまいますし、街角に立って大学芋を頬張るだけでステルスマーケティングはバッチリです。
勿論、魅了するのは周囲の人間だけでなく、お互いも同じです。
80年近く連れ添って互いのことも全て知り尽くしてるのに、若返った心臓はちょっとした仕草にもドキドキ。頬が赤くなるのを止められません。まるで初々しい新婚夫婦のような老齢夫婦にニヤニヤしてしまいます。
若返って取り戻した美貌と無尽蔵の体力。そして80年超えの人生で培った数々の経験を使って、周りの人達を魅了していくじいさんとばあさんにクスッと笑いが漏れてしまう。そんな作品です。