嵐の前の静けさ……てこと?(第156話「何考えてるの?」のレビュー)
草原で大きな岩に寝ぞべり、風を浴びているちいかわとハチワレ。2人は互いに何を考えているか他愛もない話をして笑いあう。なんてことないゆるくて可愛い日常の一コマだ。しかしナガノ先生の漫画でのやりたい放題ぶりを見てきた一部のファンからすれば、次回からまたアニメシリーズで新たな波乱が始まる、言い換えるなら嵐の前の静けさに思えてしまうだろう。
実際に「パラレルワールド編」「悪夢編」「黒い流れ星編」「拾魔編」と、今まで発表されてきたシリーズは平穏な日常から始まって、ナガノ先生が大好きな可愛い生き物の苦痛の表情を強いられるちいかわたちの闘いが始まる。
きっぱりと決着がついた闘いもあるが、読者の心に晴れない恐怖を残すストーリーの方が印象に残っている。「パジャマパーティーズ編」のようなハッピーエンド大団円のほうが少ないのだ。
特に「セイレーンの島編」では、結末の衝撃が強すぎて口と目玉を数秒間、大きく開いて固まってしまった。
漁の最中、セイレーンにぶつかって命を落とした双葉が生えている島民を助けるために、一葉の島民が人魚を殺して煮つけにして食べさせた。自分たちのせいで復讐の念に駆られたセイレーンに仲間たちが食べられた上に、ちいかわたちも巻き込んだけれども、セイレーンの撃退に成功した。
討伐の最中に、人魚を食べた永遠の命の証である単三電池がはめ込まれたお尻を見られてしまった。セイレーンにばらされる前に島から離れた2人は2人っきりで新生活を始めるも、セイレーンと人魚たちがその島へと向かう絵で、物語は幕を閉じた。
このシーンは、「やってくれたなナガノ先生!」と、ファンたちの心を震え上がらせた。
このように、ナガノ先生は可愛い生き物が波乱万丈な世界で苦痛を味わい、最後にスカッとするハッピーエンドが約束されていないストーリー展開が多い。なので今回のアニメのような平穏な話を見ても、心休まらずに嵐の前の静けさを感じてざわつき、身構える人は少なくはないだろう。