ナガノのくまの本

0oyuritokei2017のレビュー・評価・感想

ナガノのくまの本
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ナガノ先生を超えられる人いるの?もぐらコロッケシリーズ第3弾

今回ご紹介するのは、『ちいかわ』の人気ぶりで世間を席巻しているナガノ先生の作品、『もぐらコロッケ』シリーズです。この本は『ちいかわ』同様に可愛い生き物たちが、弱肉強食な世界を生き抜くお話が詰まった短編集です。
1番の見どころは第3弾のタイトルでもある「もぐらコロッケの苦悶」です。コロッケの美味しさを知ってしまった1匹のもぐらコロッケ、通称「ともぐい」は、外で仲間たちと昼寝をしている際に、仲間の手をかじりました。そこをネズミに目撃されて、口止め料に木の実をネズミに渡してネズミと会話をします。ネズミは以前、もぐらコロッケたちの巣の中に侵入してもぐらコロッケを食べたことがあり、「自分とともぐいは同じだ」と主張しました。しかし、ともぐいは、「まだちょとかじっただけで理性はある自分を一緒にするな」と激しい言い争いになります。やがてネズミの姿がコロッケを味わう自分と重なる幻覚を見たともぐいは、ネズミから逃げ出します。ともぐいは自分は違うと言いつつも、頭の中はコロッケの美味しさに侵食されており、そのまま仲間のところへ戻っていきました。
ナガノ先生はともぐいとネズミの言い争いと、ともぐいの心中を明確な言葉による細かい説明ではなく、キャラクターの表情とリアクションだけで巧みに表現しています。食べちゃいけない、でも食べたいというともぐいの表情を描く技術が高いので、精神的にやられます。ナガノ先生が可愛いキャラクターが苦しみ、悲しんでいる姿が大好きだと公言しているので、『ちいかわ』でもシリアスな物語ほど、その技術の高さが輝いています。
抗えない欲求を無理やり抑えて集団生活を続けるともぐいが、今後どうなるのか。ナガノ先生が、ともぐいに再び試練を与えるのか、はたまたともぐい関連で新たな苦しみの物語が生まれてしまうのか、不安に思いつつももぐらコロッケの続刊を心待ちにしています。