2010年代後半にモロ暴走族系のヤンキー漫画が連載開始!?そうした「違和感」が「快感」へと変化していった経緯
2017年3月1日(2017年13号)、『週刊少年マガジン』(講談社)にて『東京卍リベンジャーズ』の連載がスタートした際、「2010年代後半に、トップク(特攻服)を着たモロ暴走族系のヤンキー漫画かよ!80年代初頭の暴走族文化全盛期とは違うんだから、いったい、いつの時代の話なんだよ!」と、あまりにも時代錯誤的なイメージに対し、戸惑った人は少なくなかったはずだ
そして、筆者もまたそのひとりであった。
ただし、猛烈にスタイリッシュな絵柄、抜群に上手いコマ割りと台詞まわし、そして計り知れない魅力溢れる登場キャラクターたち(そう、「同作品に登場する全員のキャラクターが超魅力的」なのだ!)と、計算に計算され尽くしたトリッキーなストーリーに対して、連載開始早々から早々にノックアウトを食らうことになる。
一瞬否定的に捉えた対象からカウンターパンチを当てられノックアウトを食らう、じつはこれほど爽快で気持ちのよいことはない。おそらく、筆者と同じような感覚を覚えた人は大勢いたはずだ。
泣き虫で弱っちい、ダメフリーターである主人公の花垣武道。そんな彼が、中学2年時に交際していた橘日向(通称ヒナ)が東京卍會の人間に殺され、自らも何者かにより電車のホームに突き落とされたことをきっかけに、時代を行き来できるタイムリーパー能力を手にすることになる。
その後、花垣はヒナが死なずに済む未来を自らの手で実現するため、じつに10回にもわたってタイムリープを繰り返し続ける。
そのタイムリープの最中に現れては消えていく個性溢れるキャラクターたちが驚くほど魅力的に描かれ、そしてラストシーンでは、花垣がかつて共に戦い合った仲間や敵に祝福されながらヒナと結婚式をあげるという「新たな世界線」にて物語は幕を閉じる。
とくにマイキーの異母兄弟でエマの実兄とされていたが、実際はフィリピン人の女性と父とのあいだに生まれた子供であった「天竺」初代総長の黒川イザナ。この作品を通じ、常時トリックスター的役割を担い続ける稀咲鉄太のキャラクター設定とその活躍ぶりの演出は言葉にできないほどすばらしい。
連載期間はじつに5年半ほどに及び、話数でカウントすると全278話。その間、1度もダレるエピソードやシーンが存在することなく、最初から最後まで5速全開状態で描き切った作者・和久井健の才能には、ただただ敬意を払うしかない。はっきりと言えば、個人的には嫉妬を覚えるほどの才能だ。
なお、和久井にはこの先、「東京卍リベンジャーズを超えた作品制作」という限りなく高いプレッシャーが課せられることになるが、おそらくはそうしたプレッシャーをいとも簡単に跳ね返した、もう1ランク高い作品を必ずや発表してくれるであろう。
それほどの、天性のライトスタッフ(正しい資質)が和久井健には備わっていると、心の底から固く信じている。