あいみょんの「魅力の真実(ほんとう)」を紐解くための新たな視点
初めてその歌声を聴いた時、なぜか激しく懐かしい気持ちを覚えた。
しかし世間では「新世代の女性シンガーソングライターが登場した」という表現ばかりがステレオタイプ的に横行しており、そのギャップに対して一瞬ではあるが激しく戸惑ったことを鮮明に覚えている。
1995年3月6日生まれ。2014年よりデビュー活動の準備期間に入るも、所属事務所サイドの「下手に急いでデビューさせるよりは、長く愛されるアーティストに育てたい」という意向もあり、まずは意図的にインディーズからのデビューを目指すこととなった。
そして2015年3月4日、タワーレコード限定シングル『貴方解剖純愛歌 〜死ね〜』でインディーズデビューを、2016年11月30日に女子高生の自殺をテーマに据え置いた歌詞のシングル『生きていたんだよな』でメジャーデビューを果たした。
その後一大転機となったのが、2018年8月8日発売の5thシングル『マリーゴールド』だ。Billboardチャートで1位を獲得したことはともかくとして、その後もカラオケチャートの上位に居続ける名曲と化している。そのサウンドには、自らが音楽的ルーツと語っているスピッツと似た普遍的な音楽性と、聴けば聴くほどハマっていくある種の中毒性を帯びている。
だが、冒頭に記した「初めてその歌声を聴いた時、なぜか激しく懐かしい気持ちを覚えた」という理由はここにあった。
あいみょんの歌声や楽曲には、1990年代におけるJ-POPの香りがするのだ。令和におけるリスナーたちが総じて「新しいタイプの女性シンガーソングライターだ」と語るのは、当時からすでに30年近い年月が流れた結果ゆえなのだろう。
当初は過激な歌詞ばかりが注目されたあいみょんの真実(ほんとう)を解読したいのであれば、そのヒントはおそらく、1990年代のJ-POPにある。1990年代のJ-POPを色濃く知る世代としては、ぜひとも一言そう言わせていただきたく考える次第である。