9
2010年代スクリーン上で最悪の家族
物語の舞台となるのは17世紀のニューイングランド。
村はずれの寂れた森のそばで暮らす夫婦と5人の子供たちは、敬虔なキリスト教徒だ。
ある日、5人の子供のうちの赤ん坊の1人が行方不明となってしまう。どうやら連れ去られたようだが、獣の仕業か、あるいは魔女の仕業か分からない。
不安な日々を過ごす中で、父は愛娘であるトマシン(アニャ・テイラー=ジョイ)が魔女ではないかと疑い始め、家族は次第に崩壊していく。果たして赤ん坊を連れ去ったのは何者なのか。娘・トマシンは本当に魔女なのか。
本作の魅力は不気味さと美しさが共生する世界観。疑心暗鬼に陥った登場人物たちを通して伝わる恐怖が楽しめる傑作となっている。
所謂洋画でよくあるジャンプスケアものではないので、ジャンプスケアが苦手な人も鑑賞が可能だが、鑑賞後も泥のようにジメジメとした陰鬱で不穏な空気がまとわりつくような作品なのだ。
主人公のトマシンを演じるのは、映画界のみならずファッション界や多方面での躍進が目覚ましいアニャ・テイラー=ジョイだ。
彼女の個性的で妖しくも美しい魅力はまさしく「魔女」のようで、思わず画面に引き込まれてしまう。