1980年代のアメリカン・コミックスを原作にした映画「ウォッチメン」
個人の身の周りで起こる出来事は、時に国家の判断や世界情勢と深く関係しているものです。
この1980年代のアメリカン・コミックスを原作にした映画「ウォッチメン」は、一見無関係なマクロな状況とミクロな視点を融合させたエンターテインメント大作だ。
ヴェトナム戦争やジョン・F・ケネディ大統領暗殺、キューバ危機。20世紀のアメリカを揺るがし、震撼させた事件の陰に「ウォッチメン」と呼ばれる"監視者"たちがいた------。
だが、政府の命令で1977年に彼らの活動は禁止され、メンバーの中には一市民として日常を送るものもいた。
ニクソン大統領が政権を握り続けていた1985年のニューヨークでメンバーの一人、ブレイクが暗殺される。謎の男ロールシャッハが、科学実験で超人となったジョンや、事業を成功させて巨大な富を築いたエイドリアンら、かつてのメンバーを訪ね、事件の闇に迫っていく。
善と悪を絶対視せず、とことん暗いトーンでヒーローを描く手法は「ダークナイト」を連想させるが、構成はより複雑で、その世界観も壮大だ。
アフガニスタン情勢をめぐってアメリカとソ連の間の緊張は頂点に近づき、核戦争の恐怖が日増しに高まっていく。このように、予断を許さない政治サスペンスと、殺人事件をめぐるミステリーが並行し、時に交錯しながら進行していく。
超人が瞬時に空間移動するなど、フィクションであるのは明らかだが、安心しながら観ることはできない。"核の恐怖"と"敵国"に対する妄想に悩まされた時代の"空気"が実にリアルで、私の気持ちを不安にさせ、ストーリーに引きずり込むのだ。
宇宙や生命、倫理、アクション、ラブストーリーといった要素を詰め込みながらも、ザック・スナイダー監督は違和感なくまとめていると思う。
この映画は、21世紀の視覚効果が、20世紀の風景や衣装とこれまたうまく融合していて、私の感性を限りなく刺激するのだ。