アビスの呪いと祝福...アビスは人生そのもの?
この作品はアビスと呼ばれる謎の大穴で繰り広げられる冒険譚だ。アビスにはいくつもの遺物と呼ばれる宝が眠っており、人々はこぞって大穴に潜っていく。
しかし、アビスには避けて通れない「上昇負荷」という障害がある。上昇負荷はこの物語に欠かせない要素の1つだ。
アビスに潜るのにはなんら負荷はかからない。しかし、そこから少しでも上がろうものなら、人体に様々な悪影響があるのだ。それは、上昇負荷(アビスの呪い)と呼ばれるもので、深く潜れば潜るほど強くなっていく。「なれはて」と呼ばれる人外になったり、確実に死に至る。
メイドインアビスは主人公のリコとレグは、最下層で待っているであろうリコの母親ライザに遭うことを物語の主軸としている。つまり、この冒険は決して引き返すことのできない、片道切符なのだ。
加えてアビスには危険な原生生物がたくさんいる。とても生半可な気持ちで挑むものではない。
だから、ゆるふわなビジュアルに反して、残酷でえぐい描写が多い。作品にしばしば出てくる言葉でいうなら「度し難い」というべきだろうか。
アビスはしばしば、人生に例えられる。日々、何かに挑み、煮え湯を飲まされ、ときに人生を狂わせるほどの代償を払うことになる。それは子供だろうと同じだ。
あどけない子供たちがひどい目にあうのだから心がなお痛むし、突き刺さる。
そんな呪いに対し、アビスには祝福も存在する。
ナナチはなれはてではあるが、人体実験により、祝福を受けた希少な存在だ。ナナチは他のなれはてとちがい、人間らしい知能や感情も残っているし、上昇負荷の原因であるといわれている「力場」を読むことができる。つまり、呪いにあらがう力を手に入れているのだ。そのモフモフな見た目は、とても愛らしくレグの癒しにもなっている。
癒し要素やギャグをたくさんおりこまれているので、たいへん親しみやすくなっている。
そんな『メイドインアビス』は、作りこまれた世界観と人間模様と多くの謎があいまって、魅力的なハイファンタジー作品に仕上がっていると思う。