機械少年と少女が挑む過酷な世界での心えぐる冒険譚
可愛らしいタッチの少年と少女が、奇妙奇天烈な生物や植物に出会い、驚きや感動を得る、わくわく、どきどきのよくあるストーリーだと思って見始めた方は全員裏切られただろう。
何と言ってもこのアニメの凄いところは、幼気な少年少女、そして大人までもが巨大な生物に容赦なく食べられたり、毒を浴びて血を吐いたり、挙句の果てには体が風船のように膨らんで弾けるようにぐしゃっと体がバラバラになるといった、目を覆いたくなるようなグロテスクな描写が幾度となく出てくるところだ。
話としては、とある島の中央に「アビス」と呼ばれる巨大な底知れぬ縦穴が広がっており、日々その縦穴に魅せられた探窟家が未知なる世界を解き明かそうと奮闘する姿を描いたもの。そしてアビスで見つかる人智を超えた技術で作られた「遺物」を求め、命がけで挑んでいる世界なのだ。人はアビスから地表に上がろうとすると、その深さの階層に応じて、アビスの呪いと呼ばれる上昇負荷がかかり最悪死に至るため、上に戻るのは容易ではない。
その恐ろしくも人を惹きつけてやまないアビスのほとりに住む見習い探窟家である孤児の少女リコは、記憶を失った人型の機械少年レグと出会う。ある日、優秀な探窟家であった母親の白笛が見つかり、リコは母を、レグは記憶を求めてアビスの深層に挑む。木々が逆さまに生えている森や、巨大で狂暴な生物など、リコとレグは様々な地形や生命体に出会っていく。
そんなアビスの中で出会う他の探窟家達や生き物との切なくも胸に刺さる物語も魅力的だ。それぞれに痛みと失望を味わいながらも、願いや希望を胸に深層を目指していく2人。リコとレグがこの先どんな見知らぬ生物や世界に出くわすのか、そして誰と出会うのか。
痛々しい描写を我慢してでも見続けてしまう、何とも言えないスリルと心えぐる切ない物語が他には無い、唯一無二の魅力溢れるアニメ作品である。