家族に会いたい父親の奇跡。
この映画の一番大事な登場人物はヘクターだと思います。歌を作ったのもヘクター、物語の核心もヘクター、ヘクターありきの映画です。そして、そのヘクターの願いというのが映画のテーマですが、それはただただ、家族に愛していると伝えたい。それだけなのです。
こんなにシンプルなメッセージを伝えたいだけなのに、ヘクターはそれが叶えられないまま、家族から忘れられようとしている。いったい何年ヘクターは待ったのでしょうか、一番気持ちを伝えたい娘のココが子供から老婆になるほどの時間、ヘクターは悩み続けているのです。その期間、ヘクターはただ家族を思って手を尽くしています。そして、今にも忘れられそうな夜、ミゲルという少年がやってくる。その少年の騒動によって、自分の死の真実を知り、家族との和解ができ、娘への愛を伝えられる出来事がある。苦悩し続けたおかげで全て報われる瞬間がやってくるのがこの映画です。
このヘクターの人生を思えば、この映画での号泣は自然なものだと思います。自分の人生に何を求めているのか、それがわかってから始まる苦悩、そしてそれを達成するカタルシス。映像の美しさや、音楽の良さもあって、人に進めたくなる映画だと思います。