アウトサイダーパラダイス

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アウトサイダーパラダイス
10

2人きりのコマの中の空気がとても最高

『アウトサイダーパラダイス』は、アニメ化もされている人気漫画『あそびあそばせ』の涼川りん先生の作品だ。
とある中高一貫校に通う5人の女子高生、新聞部員のぺんぺん、つーちゃん(躑躅さん)、美術部員のシャネル(ねるとも呼ばれる)、エルメス、ミュウミュウ(美憂)がメインキャラクター。非常に癖が強めの学園日常コメディものである。

ある日の放課後ぺんぺんは美術部の部室で、エルメスが積み上げたブロックの作品の下に敷いていたタイトルの紙を引っ張って、作品を壊してしまった。
そこを目撃したシャネルはぺんぺんの代わりに修復するが、途中からシャネルは「ここからは有料」と言い出す。彼女がぺんぺんに要求したのはお金や食事をおごることでもなく、二人だけの秘密だった。
(ここははっきりとシャネルが言ったわけではなく、書き手の解釈である。この次の話の冒頭で、ぺんぺんがシャネルと放課後の美術室で関係を持ったことを思い出すサイレントなシーンが存在していた)。

それ以降に新聞部の先輩が校長室に勝手に入り、施錠されて出られなくなってしまい、ぺんぺんとつーちゃんがピッキングするという話がある。
途中でシャネルがピッキングに参加することになったため、つーちゃんが見張り役で扉から離れて2人きりになり、ぺんぺんがシャネルにピッキングを教える静かな3コマが流れる。
2人の目線は校長室の扉の鍵に集中しており、ぺんぺんの短い言葉だけだったり顔から汗が流れていったりするなど、大きい変化が起こっているわけではない。しかし、再びやってきた2人きりの空気の時間を描いた3コマが、とても良かった。

ぺんぺんとシャネルが醸し出す放課後の2人だけの秘密と、静かな2人きりの空気の虜になった書き手は、最終巻までの続刊の購入を決定した。