yamatakkuのレビュー・評価・感想

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10

劇中劇『サロメ』のダンスシーンは必見です!

土屋太鳳は美しい。
彼女が演じるニナは美しいけれども、演技力はほぼ皆無という残念な新人女優でした。
対して、芳根京子演じる累(かさね)は、顔に醜い傷を持ち、ずっとうつむいて生きてきたのに、その内側にあるのは美人女優として一世を風靡した母の血筋でした。
そんな彼女の手にあったのは、母に手渡された秘密の口紅。
唇に塗ってキスした相手の顔を奪うことが出来る、というその口紅を用いた累は、ニナの顔を奪い、舞台のヒロインの座を手に入れるのです。

その間、ニナに残るのは、累の醜い顔でした。
二人はお互いの能力と顔を介在して共存していくのですが、上り詰めていくニナの顔をした累と、とりのこされたような気持ちを噛み締める、累の顔をしたニナ。
巨匠の演出家の舞台作品『サロメ』のヒロインを射止めた累ですが、サロメはかつて母が演じた運命の作品でもあったのです。

サロメはユダヤの王女で、自分を振り返ることのない予言者ヨハネの首を求めて激しく舞うのです。
そのシーンは、大学で洋舞を専門に学んでいた土屋太鳳さんの素晴らしいダンスが見られます。
エキゾチックな衣装とメイクに、狂気をはらんだ舞は、まさにサロメそのものでした。

主人公の二人はくるくると入れ替わり、その顔と、キャラクターの入れ替わりに、見る側は翻弄されまくり、その幻想的な物語は衝撃の結末を迎えるのです。