福来たる

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福来たる
7

幸せを見直す機会になる一作

この漫画は藤子・F・不二雄のSF短編作品の一つで、主人公のとある会社の中年係長が出会ったのは、子供のような見た目をした福の神だ。百年ぶりに人間の世界にやってきたは良いものの、誰も自分を信仰するどころか、姿すら見てもらえずに嘆いていた。そこへ主人公にその姿を認識してもらえたという事で、御礼に幸福にしてやると言い、主人公の家に一晩泊まった。しかし、食べ物を容易く捨てる、子供の小遣いに千円=何万倍ものの銭を与えるなど、福の神は、百年経過して変化した人間の感覚に驚くばかり。しまいには主人公と口論になり、貧乏神と罵倒されたことに完全にお冠になった福の神は、主人公をとても貧乏な農民の吾助へと転生させてしまう。吾助は凶作が続いたせいで、家族が死んだり身売りしても飢えから逃れられない、まさに不幸が連続する地獄の生活を送っていた。福の神は主人公が吾助として苦しんで生きれば、転生前の生活に戻ったらそれが充分に幸せで事足りるものだったことを感じるだろう。しかし、それに気づくのはいつになるだろうなと言って、天へと去っていった。

ここからは私の個人的な考察となるが、この作品は、どれだけ人間が豊かになっても欲が絶えないと主人公が述べていたことから、令和の世を生きている自分の生活、取り巻く環境や人生に対して悲観的になった際に、技術が発達しておらず、食べるものが気軽に手に入らなかった過去などの特定の対象と比較したら、充分健康的に生活出来ていて、ご飯も食べられるうえに、娯楽も多くて幸福なのではないか、それでも幸せでないなら自分にとっての幸せの基準や価値観は何をもってして決めているのか、自分自身を見直すきっかけとなる一作、なのかもしれない。