明日への地図を探して

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明日への地図を探して
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ループする世界に取り残された男女の青春ラブコメ「明日への地図を探して(2020)」レビュー

イアン・サミュエルズ監督の「タイムリープ」×「青春ラブコメ」映画です。
特定の1日をひたすらループする世界の中でループを認識できている主人公「マーク」とヒロイン「マーガレット」の二人が、世界がループする原因をつきとめようとあちこちを調査する際に起こる「ちょっとしたこと」を通じて、心を通じ合わせる物語となっています。

この作品のおもしろいところは、映画のスタート時点ですでにマークが数十、数百といったループをすでに経験済みであることです。タイムリープ映画によくある「ループに気づき、困惑し、慣れていく」過程をすっとばしていきなり死んだ目でループする日常を、やり慣れたゲームのタイムアタックのようにこなしていくマーク。そんな中で今までのループと違う動きをする女の子のマーガレットと出会います。協力してループを脱出しようと画策していく中で、マークとマーガレットはお互いが今までのループで見た「ちょっとした奇跡」を共有します。「○時○分に湖から鳥の親子が飛び立つシーンがはっきり見れる」や「×時×分にこのベンチに座っていると向かいのおばあちゃんと背後の翼の壁画があわさっておばあちゃんに羽根が生えて見える」など、なんてことのない出来事たちですが、ループの最中の二人を通じて視聴者にも日常のなんてことのない「ちょっとしたこと」の素晴らしさを認識させてくれます。
この「ちょっとしたこと」を記録して地図にしたものをマーガレットへのプレゼントとしてマークが作っていくのですが、これが原題の「The Map of Tiny Perfect Things」というわけですね。終盤ではこの地図がループを解くカギになっており、二人の青春から問題解決までの流れに無駄がありません。そして、ラストシーンではこの日に起こる「ちょっとした奇跡」はすべて集めきったはずなのに、理論上あと1か所足りていないという状況に陥ります。このあと1か所というのが「恋に落ちた二人のキス」であり、恋の成就がとどめとなりループを抜けることができる、という結末も感涙を禁じえませんでした。

総合して、タイムリープものという癖のある題材をベースにしているものの、描かれるのは少年少女によるストレートな青春であったり思春期特有の親との向き合い方だったりします。そのギャップに驚かされるとともに、二人の恋にどんどん感情移入できる作りとなっていたため、大満足の映画体験となりました。