未知への憧れは止められない『劇場版「メイドインアビス 深き魂の黎明」』
主人公たちとボンボルドとの対決では、近年稀に見る恐ろしい敵キャラとの戦いが描かれています。何が恐ろしいかというと彼は自分自身が恐ろしい人物だと感じていないという異様なふるまいをし、周囲にとっては残忍としか表現できない行動を自然なことだと思っている点です。自分を正常だと思い込むことで、ネジが飛んでいると思われるような行動をとることは、まともな感性を持っていない証拠ですよね。主人公のリコもそれに近い何かを内に秘めているように描かれていることから、探究心が人を狂わせることを示しているのだと思われます。
R15+での公開となった本作は、ハードな描写を繰り返します。秘境の大穴の全貌はまだ見えていません。苦しい思いをしながら未知の世界を目指す主人公たちには、これ以上の試練が待ち受けているのではないかと思わされます。しかし、それでも彼らは未知の探究を続けようとし、冒険への憧れを失っていないところが熱いですね。苦難の中にある楽しさやワクワク感に興奮し、探険家としての自己実現を果たそうとします。人はどれだけ苦しい思いをしても、未知への憧れや興味を閉ざすことはできないのでしょう。
今作では、未知への憧れや冒険への向かう姿勢を忘れず、主人公たちの探求する姿を描くことで、人間が持つ素晴らしい可能性を思い起こさせてくれます。冒険感とスリル満点のストーリー展開に加え、主人公たちの意志と熱意によって見る者の心を熱くさせる本作は、必見です。
ただしR15+ということは付け加えておきます。グロい表現もあるため、人を選ぶかもしれません。