偶像〈アイドル〉とは何か―「推し」や「萌」を超えた人間群青劇
「アイドルとは何か?」という問いに真っ向から応えた作品。この作品はただのアイドル作品ではない。人間群青劇だ。
顔がいい、歌がうまい、スタイルがいい、目を引く。アイドルを形容する言葉はたくさんある。数多くのアイドルたちはそういった人々の希望や夢、好きという気持ちを全身に受けて輝くものだ。けれど彼らのいる世界は華々しいだけではない。
そこに目を向けたアイドル作品がこれまでいくつあっただろうか。
「アイドルを苦しめるのはいつだってすきという気持ちなんだよ」。これは作中のキャラ、百(モモ)のセリフだ。誰かが望むことは誰かの不本意かもしれない。彼は作中トップアイドルとして芸能界に君臨しており、その地位に至るまでの苦労と感動は計り知れない。そんな彼の発するその言葉は重みを感じる。
今や空前の推し活ブームだ。アイドル産業もきっとその一つであろう。大衆の「好き」という一言に凝縮された行き場のない愛を一身に受け止めるアイドルの姿を、『アイドリッシュセブン』は真摯に現実味のある重さで描き出している。
きっとキレイだけじゃない世界、ユーザー目線でみた『アイドリッシュセブン』の世界が現実を生きる私たちのリアルとリンクするとき、私たちはアイドルという虚構に暗に求めているもの、彼ら・彼女らの一瞬の輝きを渇望していることを自覚する。
魅力あふれる華々しくも泥臭い世界をぜひ体験してみてはいかがだろうか。