庵野監督「シン」シリーズ三作目 令和に蘇る仮面ライダーの原点
ゴジラとウルトラマンに続く庵野秀明監督による「シン・」を冠する映画の三作目「シン・仮面ライダー」のレビューです。
「変わるモノ。変わらないモノ。そして、変えたくないモノ。」というキャッチコピーを持つこの作品は、ゴジラやウルトラマンと比べると一見には優しくありませんでしたが、「仮面ライダー」というヒーローの在り方と原点を丁寧に紐解いた作品であるように感じました。
「イー!」と叫ぶ黒タイツの戦闘員……と多くの人がイメージを抱いているであろうショッカーという存在、その根幹である組織について新たな解釈を示してくれたのも興味深かったです。シン・仮面ライダーにおけるショッカーという組織は「最も深い絶望を抱えた人間を救済する行動モデルが、最大多数の最大幸福であり、人類の目指すべき幸福」を軸に持ち、そのため人間社会に適合できなかった人間が改造手術を受け、幹部として各々の幸福実現に向けた非合法的な活動に従事しています。人類を脅かす悪人たちも元を正せば幸せになりたかった只の人間であり、絶望によって拗れた思想からくる手段と、それがもたらす結果の歪さにはどこか物悲しさすら覚えます。そして、利己性と絶望に屈した彼らがいてこそ、自分以外の誰かのために戦う「仮面ライダー1号」の姿に胸を打たれるのです。