劇場版ポケットモンスター キミにきめた!

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劇場版ポケットモンスター キミにきめた!
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リメイク要素は思った程ではないが、往年のファンにはグッと来るシーンもあり

劇場版ポケモン20周年の節目として公開された作品です。それまでの劇場版シリーズと大きく異なる点は、まずTVアニメ版に基づいて作られたものではないということでしょう。最新作アニメの「サンムーン」は、それまでのポケモンアニメと異なり冒険ものではないため、映画として成立させる事が困難だったのか、アニメとは完全に別枠の世界として制作されています。スピンオフのような位置づけと言うべきでしょう。
また、本作の大きな特徴としては、1997年に放送されたアニメ第一話のリメイクの他、初期のアニメシリーズの名場面を織り交ぜており、子供のみならず大人もターゲットにした作品である事も挙げられます。
この、昔からのファンを狙った作風で、往年のファンを唸らせるような予告編ではありましたが、結果的には激しく賛否両論が巻き起こりました。

実際、この映画は評価出来る点とそうでない点がはっきり分かれていると思います。
後者から先に挙げると、リメイクを前面に押し出していたにもかかわらず、アニメ第一話のリメイクはほんの冒頭だけで、その後はほとんどオリジナルストーリー、オリジナルキャラクターで構成されていたという点です。やはり、リメイクというのであれば、カスミとタケシは出して欲しかったところです。純粋にリメイクだけを期待して見に行った人は大コケしたはずです。かつてのアニメの名場面も確かに盛り込まれていましたが、申し訳程度のものです。
本作のスタッフロールに、一部脚本として、故・首藤剛志氏(ポケモンアニメ黎明期を支えた脚本家)のクレジットが表記されていますが、「首藤氏の屍体蹴り」と叩かれている理由はこのせいでしょう。捉えようによっては、かつてのアニメ版が無かった事になりかねないストーリーだったのです。

しかし、評価に値する点は、ピカチュウが喋った事…ではなくて、スタッフの皆さんなりの、首藤氏へのリスペクトが窺い知れた事です。
それは物語の中盤、サトシとピカチュウがケンカ別れし、その時にサトシが見た「夢」のシーンでした。
このシーンは、首藤氏が当時構想していたという、「ポケモン最終回」が基になっていると推測されます。

最終回の内容は要約すると「ポケモンの世界は、サトシが見た『夢』であり現実ではなかった」という、いわば夢オチのような形で終了する予定だった、というわけです。
もしこれが放送されていれば、当時の小学生達の間で相当物議を醸す事になったでしょうが、あの「ポケモンショック事件」がきっかけでポケモンアニメの放送が延長され、結局没になったのです。
しかし、この最終回が放送されていれば、あのシーンのような内容であったと考えられます。それを、20周年を迎えた今、故人である首藤さんスタッフとしてを迎え、氏の作品のオマージュを織り交ぜたのは大いに意義のある事だと思いますし、この最終回プロットに目を通した人であればきっと「あの回だ!」と気付くはずです。
これが、ポケモン黎明期を支え、ポケモンアニメの礎を築いた首藤さんへの、スタッフ達による敬意だったのでしょう。

色々と突っ込みを入れたいポイントはあるのですが、是非この最終回プロットに一度目を通した上で、本作を鑑賞してみて頂きたいです。