まぼろしの市街戦 / King of Hearts

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まぼろしの市街戦 / King of Hearts
10

「戦争反対!」を声高に叫ばなくとも伝わる戦争の現実

第一次世界大戦末期の北フランスの小さな村を舞台にした反戦映画。
村にドイツ軍が仕掛けた時限爆弾解除の命を受けたイギリス軍の通信兵プランピックは、ひょんな事から、精神病患者たちから「ハートの王様」として祭り上げられる。
患者たちは、戦争のことを知ってか知らずか、病院の外に出て、思い思いの格好をして自由を堪能する。村人も軍隊もいなくなり、残ったのはこの患者たちとサーカスの動物だけ。そんな中、まともに見えるのはプランピックひとり。
冒頭の爆弾を仕掛けるドイツ軍、作戦を練るイギリス軍を見せることで、戦争映画ですもんね!と思うことはできるが、緊張感を覚えるのは最後の銃撃戦のシーンぐらい。どちらの司令官も、あまり頭が良さそうには見えないし、ステレオタイプの軍の「おかしら」風情なので、軍隊を指示して戦争をよしとしている者を滑稽に見せることには成功しているのかも。
残されたわずかな時間の中で、プランピックは患者たちを村の外に避難させようと奮闘するも、誰一人として聞く耳を持たず、彼は死をも覚悟する。

患者たちの世界の全ては、この村の中だけで、村人たちのいないこのいっときだけが、自由を謳歌できる限られた時間だというのを知っているのだろう。
常に明るく振る舞い、ふざけているように見える彼らにも、信念を感じられるのが、崖の上からひとり村の外に出たプランピックを静かに見下ろすシーン。自分たちが、外の世界に行っても生きられないことを知っているのが伝わる。
美しい少女コクリコから教えられたヒントをもとに、プランピックは爆弾の解除に成功、その後イギリス軍とドイツ軍は相討ちとなり全滅するのだが、すると、患者たちは「ごっこ遊び」を終わらせ、病院に帰っていく。それまで「兵隊さんが来た!」とお祭り騒ぎをして、相変わらず自由気ままに楽しんでいたように見えた患者たちが、身につけていたものを順に脱ぎ捨てて、病院に戻る様子は、こちらもなぜか置いてきぼりにされてたような感覚に陥る。
両軍が相討ちとなって全滅した様子を見た患者が呟く「これは芝居が過ぎる」という言葉。これが全てを物語っているのだろう。
解放軍によって勲章を授けられ、最前線部隊として出陣を命じられたプランピック。前線に向かうためのトラックに乗せられたプランピックは、通り過ぎて行く精神病院の閉ざされた門を見つめ、通りを曲がる。そこへ伝書鳩の籠を携えて引き返すプランピックの姿を見たときは、なぜだか涙か出そうになる。両軍が相打ちで全滅した時も、勲章をもらった時も、感情をあらわにしなかった。(まさに言葉通り)全てを脱ぎ捨て、病院の門を叩き中に入り、患者たちとトランプに興じる彼の目には、安らぎが宿っていた。