薔薇王の葬列

薔薇王の葬列

『薔薇王の葬列』とは、ィリアム・シェイクスピアの史劇『ヘンリー六世』および『リチャード三世』を原案とした菅野文による歴史・ファンタジー漫画。秋田書店の『月刊プリンセス』にて2013年11月号から2022年2月号まで連載された。単行本は全17巻。本作はテレビアニメ化されており、2022年1月から6月まで連続2クールで放送された。
主人公のリチャード三世が両性具有という設定で、白薔薇のヨーク家と赤薔薇のランカスター家の王位を巡る戦い「薔薇戦争」を描く。

8psakiのレビュー・評価・感想

薔薇王の葬列
9

シェイクスピアのリチャード三世のイメージが覆る解釈

本作は菅野文さんがシェイクスピアの「リチャード三世」と「ヘンリー六世」をもとに再構成した物語として描かれた漫画作品でしたが、これまで一般的に流布されていたそれらの戯曲や歴史的事実とされている知識が覆るような物語でした。
醜い悪人として長らく貶められてきたリチャード三世を悲しみにあふれた美しい人に…そして悲劇の王子たちがただその悲劇性をまとっていたわけではない、むしろとても人間臭い生き物であったという…二重三重のまるで呪いのミルフィーユのような物語の積み重ねが見事であり、そこには愛したい、愛されたいといった人間の感情がすれ違い、かみ合わずに朽ちていくかのような哀しみがありました。
この物語が完結した次世代にヘンリー八世が、そしてエリザベス一世が生まれてくる流れの布石までが打たれて、そこに向かうような余韻を味わいながらも、きちんと完結されたことは素晴らしいと感じています。
舞台化・アニメ化もされましたが、やはり原作コミックのタッチの美しさ、キャラクターの描写力の素晴らしさは特筆すべきレベルで、そのコマとコマの間の隙間をも埋めるほどの密度で描かれている菅野さんの絵は時間をかけてじっくりと味わうべきだと思っています。