ルフィとウソップは「友達」じゃない!? 王道かつ邪道な『ONE PIECE』の魅力!
『ONE PIECE』といえば、言わずと知れた海賊漫画であり、週刊少年ジャンプの看板タイトルとしても知られている。
華々しい商業展開もあって、王道の少年漫画というイメージを持つ人も多いだろう。
しかし『ONE PIECE』は少年漫画として、ある観点から見れば、はっきり異端と言える特徴がある。
それは、「友情」の要素が極めて希薄ということだ。
『ONE PIECE』という作品は、ゴムゴムの実を食べてゴム人間になったルフィという少年が、仲間を集めて海賊団を結成し、海賊王になるまでの航海を描いた物語だ。
その中心となるのはルフィを船長とした海賊団、麦わらの一味。
一味の仲間たちは様々なエピソードを経てルフィのもとに集い、冒険の果てを目指している。
無論、一味の結束は固く、絆は間違いなく存在する。
また海賊団といっても少年漫画らしく10代の少年少女が中心で、船長であるルフィに船員たちが畏まるようなこともなく、
不仲な団員もいるものの愛嬌の範囲であり、一味は常に和気藹々とした、まさに友達のような関係だ。
しかし作品を読みこむと、そこには友情とは一線を画する、海賊団だからこその関係性が存在することがわかってくる。
麦わらの一味の航海は陽気な雰囲気で進むが、海賊は海賊。
ほとんどが少年の集まりといえど、常日頃から海軍に追われ、時に海という自然の猛威に晒され、他の海賊団との襲撃と隣り合わせの航海だ。
その中では組織としての団結が必要不可欠となり、少しの気の緩みが破滅に繋がる。
そんなシビアな価値観は、作中の描写に現れている。
麦わらの一味は作中で一貫して一味のメンバーを「仲間」と呼び、「友達」と呼んだことは一度としてない。
メンバーの間に友情に等しい絆はあるものの、それ以上に海賊団という組織としての繋がりを大事にしているのだ。
この、まるで任侠物のような組織の運営は、『ONE PIECE』を王道少年漫画というイメージで見ている人からは驚かれる事実だろう。
特にそれが顕著なのは船長・ルフィの扱いだ。
前述のとおり船員たちはルフィに畏まることはなく、時には(ギャグに対するツッコミとして)殴ったり蹴ったり馬鹿にしたりと、およそ船長とは思えない扱いをする。
しかしながら、一味は加入の経緯はそれぞれ違えど、船長・ルフィに惹かれて加入したということもあり、いざという時には船長としてのルフィを信頼している。
ルフィもまた、そうした船員の期待と自身の役割を理解し、何よりもまず、船長としての責任を果たす。
楽観的で子供のようなキャラクターであるルフィの裏に、そうした組織としての価値観が、軸として存在しているのだ。
特に、一味の中での不和が現れ、組織としての在り方や船長の責務が問われる長編「W7編」では、
これまでにないほど真剣に海賊団という組織について語る一味の姿が見れるので、必見。
このように『ONE PIECE』は王道の少年漫画でありながら、友情という要素は希薄であり、その代わりに「仲間」という関係性について極めて深く取り扱っている。
いわば王道でありながら邪道でもあるような作品なのだ。
『ONE PIECE』のこうした側面は仲間に関して以外にも様々あり、それについてはぜひ一度、その目で確かめてみて欲しい。