絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男

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絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男
8

ヤマなしオチなしイミなしとは言い難い。積み重ねた歴史を感じさせる、BLの世界を知れる作品。

本来であれば読者が作中の登場人物達のボーイズラブ(BL)世界を捉える主体と存在するが、
本作品では、いわゆるモブキャラという属性の登場人物がBL世界を捉える主体として存在しており、読者は一種の客体として存在するのである。
凡顔のBL世界の住人である彼が、ふとした瞬間にBL色に染まってしまう世界でひたすらにその不条理な定めから逃れようと抗う様が、彼の心理描写と共に、とても丁寧に描かれている。
「腰細ぇ。ちゃんと飯食ってんのかよ」等と、BL作品ではよく使われる台詞を、彼の解釈と感想を交えながら、
現場のやりとりを目の前にしながら冷静に分析している様は、読者目線に近しいもののようにも感じられ、微笑ましくなった。
『男性登場人物の名前が中世的であること』
『知られたくない自他の隠し事(=片思いの男性への気持ち)を、誰かに言いたくて仕方がない人間(=男性)がいること』
『殆どの女性の顔がぼんやりしているBL世界の中で、妙に顔の造形がはっきりとしている女性の意味とは?』
それぞれがショートストーリーとして彼の日常生活の中で描かれているため、BL本初心者でも読みやすい作品とも言える。
勿論、ある程度のジャンルのBL本を読み込んでいる人にも入り込める作品でもある。