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美しく幻想的で滑稽な御伽噺が今開幕する
『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』などの童話のモチーフを多く取り入れられ、
笑いとシリアスがほどよく混ざり合った緩急ある表現、そして最大の特徴として綿密で複雑な伏線とちりばめられた記述トリックが癖になる不思議な物語である。
主人公のオズは15歳の成人の儀を迎えたが、その成人の儀の最中に突然現れたバスカヴィルの民と呼ばれる者達。
連れて行かれれば二度と出ては来られない、大罪人の入る監獄『アヴィス』に身に覚えのない罪により閉じ込められてしまう。
そこでオズは血染めの黒うさぎと呼ばれる少女アリスと契約をしてアヴィスから脱出するが、脱出した時には10年の時が経っていたのだ。
オズの罪とはなにか、少女アリスの正体は、謎多き物語が今開幕する。
物語の第一話から伏線がちりばめられており、ストーリーが進んでいきその第一話の伏線が回収されるが実は記述トリックによるミスリードで謎が謎を呼ぶ展開となっている。
最後にすべての伏線が回収され物語が収束していく様子はまさに圧巻である。
複雑に練り込まれた伏線や記述トリック、それぞれの信念や強い思いを持った登場人物達が繰り広げる人間模様、
それらの美しくてもの悲しい幻想的な物語は読む者の心を引きつけて放さないのだ。