バーレスク(2019年の映画)

ozawak4のレビュー・評価・感想

バーレスク(2019年の映画)
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コンプレックスを超えていけ!自信がなくて一歩踏み出せない人に見てほしい大人の青春映画。

この映画のタイトルでもある「バーレスク」はバーレスクダンスのことなのだが、日本ではあまり馴染みのない単語かと思われる。
バーレスクダンスはダンサーがセクシーな衣装や仕草で観客を魅了する色気のあるダンスのことだ。
官能的なパフォーマンスが目立ち、ヌードになることもあるので、そういった表面的な部分だけ見てしまうと、
もしも自分に小中学生くらいの子供がいたら積極的に見せたくないと感じてしまう人も少なくないと思われる。
しかし、そんなバーレスクダンスに憧れをもつ本作品の主人公は、まさにそのくらいの年頃の子供たちを日々相手にする学校教師だ。

自身が勤める学校の校長を母親にもつ教師・ベティーはダンスが好きで、特にバーレスクダンスはインターネットの動画を観て一人でこっそり真似して踊るくらい好きな女性。
ある日、プロのダンサーである友人をダンススタジオまで送ったことをきっかけに、バーレスクダンスのレッスンを受けるようになるが、
周りのダンサーとは異なる自分のふくよかな体型に引け目があるため、ダンスにのめり込む一方で自分に自信が持てないままでいる。

ベティーの本業は教師なので、物語は学校の教師としてのベティーの生活も同時に追って描かれている。
引き締まった身体をもつダンサーたちの世界とは違って、学校教師という立場であれば身体的なコンプレックスを感じることも少ないのかと思いきや、意外とそうでもない。
校長である母親は太った体を見せないよう露出の少ない服装ばかりを強要してくるし、
問題を抱えた男子生徒はベティーとトラブルを起こしたことを発端にベティーの体型を侮辱した発言ばかり繰り返し浴びせてくる。
ベティーをレッスンに誘い、指導してくれる女性は、スタイルの良し悪しだけでは観客を魅了できないことを知っているため、
バーレスクが本当に好きなベティーに自信を持たせようと勇気づけてくれるのだが、その度にやっと芽生え始めた自信を踏みつけてくる人間もすぐ現れてくるため、ベティーは葛藤を繰り返す。

まるで呪いのようにまとわりつくコンプレックスと向き合っていくベティーの姿がこの映画の見どころとなるわけだが、
傷ついたり、時に太っていることを忘れたかのように楽しんだりする彼女の心の動きはとてもリアルで共感を生むはずだ。
携帯電話の着信音を1980年代のヒット曲「Girls Just Want to Have Fun(女の子たちはただ楽しみたいだけ)」にしているところも、
本当はポジティブに自分の人生を楽しみたいというベティーの気持ちを表しているようで切なくなる。

最後にベティーはどう成長していくのか?周囲の人間はどう変わっていくのか?
全てが全て上手くいくわけではないけど、自分の殻をやぶれる勇気を出せるのは自分次第ということをじんわり教えてくれるような一本である。

満点でないのは、ラストにベティーが受け取る一通のメールの翻訳がなかったため。
チェコ語なのだが、この映画を観た人にはぜひ頑張って調べてみてほしい。
その意味が解れば、鑑賞後の気持ちを更に清々しいものにしてくれるはずだ。