夢と現実の狭間でもがく少年少女の一瞬のきらめき
主人公は有名音楽雑誌のライター見習いとして家を飛び出し、ロックバンドのツアーに帯同した15歳の少年。
そこで出会ったグルーピーの少女と過ごす中で、揺れ動く自身の感情と向き合う少年の成長を描いた作品です。
理想と現実の狭間でもがきながら、少しずつ大人になっていく成長が頼もしくも少し切なく、刹那的なきらめきの描写がとても美しく印象に残ります。
監督のキャメロン・クロウ自身も主人公と同じく15歳で「ローリング・ストーン」誌のライターとしてのキャリアをスタートさせており、
バンドメンバー同士やそのグルーピーの女の子たち、クセの強い音楽プロデューサーらとの人間関係の複雑さを、繊細に描いていることもポイントです。
劇中では、60年代に流行したファッション・音楽・カルチャーが細部までふんだんに盛り込まれており、画としても大変見ごたえがあります。
何より、ロックバンドを中心にストーリーが展開するため、劇中歌やサウンドトラックは物語への没入感をより高めてくれる重要な要素になっています。
主要人物全員が素晴らしい才能や魅力を持ちながら、それ故に周りから理解されずに苦しみ悩む姿に共感するとともに、
私たちは誰からの賞賛や愛情を求めているのか、本当に自分が欲しいものは何なのか、とても考えさせられる作品です。