最高の絶望感。
『地獄楽』のタイトルの通り、地獄なのに極楽にいるような不思議な世界観を味わうことができます。
舞台は江戸。死刑囚と死刑執行人がペアを組み、無人島に不死の薬を取りに行くという物語です。
その無人島の景色はとても美しいのですが、仏教美術を彷彿とさせるような化け物が多数出現し、立場の違いを超えたサバイバルに登場人物たちは巻き込まれます。
死刑囚と死刑執行人の間に当初は考えられなかったような絆や信頼が生まれていきます。
死刑囚と死刑執行人、島に昔から存在する「ヒトではない者」たち、また後になって派遣された追加の死刑執行人と主人公の同郷の者たちの三つ巴の戦いが物語をさらに混沌とさせ、この先どうなってしまうのかという絶望感に浸ることができます。
主人公の画眉丸は「石隠れの里」でも随一の力を持つ忍者でしたが、妻を愛するあまり里に反抗し、死刑囚となってしまいます。
その奥さんがそもそも存在するのか、というのも読者にとっては謎な部分ではありますが、普段冷酷ともいえる画眉丸の人間らしい部分が見え隠れし、実際に存在することを祈らざるを得ません。
世界観自体は和風と中華風が混じりあって物語の混沌とした雰囲気をさらに独特のものにしています。
ぜひ読んでみてください。