作品の臨場感を歌い上げるアニソンシンガー
いとうかなこさんの歌声は、どこか神秘的で現実離れしています。
ファンタジーアニメの主題歌を歌ってることが多いでしょうか。
いとうかなこさんが歌うと、なぜが作品とマッチして聞こえるのが不思議ですね。
いとうかなこさんの歌の中で特に印象に残っているのは、アニメ『SchoolDays』のテーマソングです。
地上波で公開禁止とされた最終話のエンディングでは、いとうかなこさんの『悲しみの向こうへ』がそのシーンの残酷性を物語るように流れていました。
主人公の伊藤誠が、自分の赤ちゃんを宿してしまった第一の恋人・西園寺世界に滅多刺しにされている部分で、『悲しみの向こうへ』が流れ始めるのです。
そして、誠と同居している第二の恋人・桂言葉が、誠の遺体を発見し、首だけを切り取り、誠の携帯で世界を学校の屋上に呼び出します。
屋上に呼び出された世界は、そこで待っていたのは誠ではなく言葉でした。
言葉は誠の敵討ちと言わんばかりに、世界の腹を掻っ捌きます。
そして、腹の中をまさぐり、こうつぶやくのです
「ほら、やっぱりなにもいないじゃないですか…」と。
最終シーン海に漂う船の甲板で、誠の頭部を抱いて横たわっている言葉のシーンがあって、音楽もちょうど終わるのです。
『悲しみの向こうへ』は『SchoolDays』の最終話にとても合った曲だったと思います。
「悲しみの向こうへとたどり着けるなら ぼくはもういらないよ ぬくもりも明日も」という歌詞があるのですが、その部分は現実を失った三人への弔いのようにも聞こえました。
自分が聞いた中でも、一番印象に残り、いとうかなこさんの良さが一番現れている曲だと思いました。