完全にCG合成されたシーンを実用化したSFシリーズ傑作映画『カーンの逆襲』
『スタートレックII・カーンの逆襲』は1982年に公開された米国のSF映画で、監督はニコラス・メイヤー、テレビシリーズの『スタートレック』を原作にしています。映画版『スタートレック』シリーズの第2作目で、ちなみに第1作は『スタートレック・モーションピクチャ』(1979年)です。映画の筋書きでは、ジェームズ・T・カーク提督(ウィリアム・シャトナー)と彼の指揮下にある宇宙船USSエンタープライズ号が遺伝子操作で誕生した巨漢カーン・ノニエン・シン(リカルド・モンタルバン)=この人物は1967年のテレビ版『スタートレック』のエピソード『宇宙種』に初めて登場した=対決することになりました。カーンがカークに復讐を果たすため15年間の亡命生活から戻ったとき、エンタープライズの乗組員は彼が強力な「変身デバイス」のジェネシスを入手することを止めるべきでした。本作は、3部構成の連作映画『スタートレックIII・スポックを探して』(1984年)や『スタートレックIV・故郷への長い旅路』(1986年)へと続く第1作目となりました。
『モーションピクチャー』で不評を買った製作者ジーン・ロッデンベリーが映画シリーズの製作から外されて、エクゼクティブプロデユーサーのハーヴ・ベネットが映画のオリジナルの概要を執筆し、ジャック・B・ソワーズが完全な脚本を仕上げて、さらにメイヤーが12日間で脚本を煮詰めました。メイヤーはクレジットされていません。メイヤーの作風はオリジナルのTVシリーズの冒険活劇風で、このテーマはジェームズ・ホーナーの映画音楽で強められています。レナード・ニモイは映画版シリーズには出演するつもりはなかったのですが、劇的な死のシーンを設けるということで出演を受諾しました。スポックの死に対する試写時の観客の反応を目の当たりにして、メイヤーの発想で、映画版第2作のエンディングは著しく変更されました。製作チームは予算の枠内に収めるためにさまざまな経費削減策を講じて、たとえば過去のプロジェクトのミニチュアを用いたり、セットの再利用、特殊効果シーンの再利用、映画版第1作のコスチュームの流用などがなされました。第2作は、コンピュータグラフィクスで生成されたシーンを含んでいる最初の劇映画です。