メイドインアビス / Made in Abyss

メイドインアビス / Made in Abyss

『メイドインアビス』とは、つくしあきひとによる日本のファンタジー漫画作品である。
作者のつくしあきひとは、ゲーム会社でデザイン等を行い、その後フリーのイラストレーターとなっている。本作品にもその経験が活かされ、ファンタジックな美しい背景やイラストが特徴である。
物語はアビスという大穴を冒険する様子が描かれている。主人公リコは人造人間のような見た目のレグと出会い、母を探しながら大穴の奥底に眠る秘密を探っていく。
美しい背景や可愛らしいキャラクターデザインとは裏腹に物語の内容は重く暗いものである。この事に関して、作中のレグの言葉を引用し「度し難い」と表現されることが多い。
テレビアニメは2017年、2022年に放映された。テレビアニメの総集編として、劇場版2019に前編『メイドインアビス 旅立ちの夜明け』、後編『メイドインアビス 放浪する黄昏』がそれぞれ公開された。2020年には新作劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』が公開された。

missy1311のレビュー・評価・感想

メイドインアビス / Made in Abyss
9

メイドインアビスが面白い

本レビューはネタバレを含みます。ご理解の程よろしくお願いします。
メイドインアビス、と言う作品をご存知でしょうか?
緻密な設定と背景で絵本の様な不思議な世界観を楽しめる作品です。
簡単にストーリーを説明します。物語はアビスと言う人類最後の未到の地を舞台に展開されます。アビスとは日本語に訳すと奈落。その文字通り巨大な縦穴で主人公達が下へ下へと降りていく物語です。
登場人物は主人公の幼い少女リコと機械の少年レグ。途中からフワフワの獣人のような可愛いナナチが加わります。
幼い少年少女と可愛いマスコットが織りなすハラハラドキドキの不思議な子供向け冒険活劇。と、初見の時は思いました。実はそうでは無いのです。少年少女と人間で無くなってしまった子どものナナチが幻想的で死臭の立ち込めるアビスの中を確実に死ぬと知りながら未知への憧れを胸にひたすら前に進み続ける。と言うかなりハードな物語です。毒に侵された少女の腕を切断しようとする場面や少年の腕が切り取られる場面、少女の穴という穴から血が吹き出す場面等はまだ序の口。少女が意識のある状態で体を解体されて内臓と脳だけの状態にされて更に倫理的にかなりキツイ状態になると言う場面があります。
何故、そんな状況が生まれてしまうのか。それはアビスと言う設定にあります。アビスには呪いがあるのです。下に降りていくのは平気なのですが、一旦下に降りて上に戻ろうとすると体に異常が生じてしまうと言う呪いがあるのです。呪いは上の方なら吐き気や目眩程度で済むのですが下に行けば行く程重くなって行きます。具体的には体の穴という穴からの出血、正常な感覚の麻痺、人間性の喪失、最後は確実な死が待っています。更にアビスには動物から植物まで凶悪な捕食者達が日々、過酷な生存競争を繰り広げております。人間はアビスの中では生存ピラミッドのかなり下位の非捕食者に過ぎず、アビスの生物に生きたまま捕食されたり残酷な毒で体の一部を失ったりと人間が生きていくにはあまりにも過酷な状況です。
アビスに挑み続ける人々を探窟家と言います。主人公達も探窟家です。探窟家は主に「遺物」と呼ばれる不思議な力を持つアビスでしか取れない物を求めてアビスの底に挑んで行きます。時に傷つき、倒れ、それでもアビスに挑む不屈の人々。アビスの底に行き着いたとしても、もう戻れず確実な死が待っているのにそれでも進み続けるのは一重に未知への憧れ故に。異常で狂気に等しいまでの未知への憧れ。それが探窟家を駆り立てるのです。
グロやリョナ描写が苦手な方にはハードルが高いかもしれませんがそれも含めた上で見終わった後に美しい作品だと思える不思議な作品です。幻想的な世界観の中にある非情で残酷な生存競争。その中でも確実に死ぬと分かっていながらアビスの底を目指す主人公や他の探窟家達。傷つき、倒れ、多くを失いながら進み続ける彼らの目はいつも未知への憧れで輝いている。そんな物語がとても魅力的でとても面白い作品でした。是非とも一生に一度見ておいて損はないオススメ作品です。