ライトノベルの領域を超えた本格的SF作品
まず、SF作品と言われれば星新一など文学会において名を残してきた作家の作品が思い浮かぶ人が多いのではないか。
また、ライトノベルと言われれば異世界に転生し冒険を繰り広げるといったような非日常を読みやすいテーマで描かれている作品を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。
しかし、ライトノベルでありながら本格的なSF作品として重厚な物語を楽しめる作品が存在する。
それが涼宮ハルヒの憂鬱という作品だ。
内容的にはどこにでもいる平凡な高校生が、未来人や超能力者などを自称するキャラクターと日常の中に発生する非日常的な現象に巻き込まれて、自分の現状に憂いながらも各キャラクターと交流を続け、次第に平凡だった日常よりも、ヒロインである涼宮ハルヒに影響されながらも次々に発生するイベントをどこか楽しんでいる自分に気がつき、様々な事件に対峙しどこか斜に構えた見方をしていた自分ではなく、本当の自分を出していく青年期の成長も描かれている。
その成長と、新たな自分の発見、そして巻き起こる数々の不可思議な事件。
色物で見ていたはずの登場人物達の魅力に惹かれていつの間にかかき回される日常に、自分の居場所を見つけ、その居場所を全力で守ろうとする主人公。
その主人公の名前の如く、キョンと狐につままれた読後感を各巻読んだ後に味わえる、そんな作品である。