フルメタル・ジャケット

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フルメタル・ジャケット
10

ベトナム戦争の真実、戦争を仕掛けるものも戦う兵士も殺されていく人々もごく普通の一般市民だという現実

プラトーン、カジュアリティズとベトナム戦争映画を見てきたが、スタンリーキューブリック名監督のこのフルメタルジャケットは、人間が戦争という殺し合いの中でいかに狂気になっていくか、それを一番強烈に描いた作品だと思う。設定が、ラストシーンがアメリカの子供がみるミッキーマウスのテーマソングで兵士たちが行進したり、色々と比喩に富んでいる。可愛いミッキーマウスのテレビを見た世代たちがベトナムで激しい殺し合いに巻き込まれてゆく。アメリカ兵を次々射殺していくベトナム兵スナイパーが女性だというのも強烈な皮肉だし、その女性兵士もまたアメリカ兵に殺されてゆく。女子供を守るなんて余裕はどこにもなくすべてが殺人マシン、人間的感情を持ったものは次々に殺されてゆく。本当に恐ろしい。またプラトーンでもそうだったが、兵士にとって死というものがいかに日常であるか淡々と描かれる。本当に簡単に人が死んでゆく。こういう中でないと女子供を殺すという気分にはなれないと思う。ベトナム兵士のほとんどが帰還後、精神病になっているというのもうかがえる。ここに登場してくる兵士たちは自分と深く向き合うことをせず、されを避けただ命令に従うマシンになる。これが戦場で生き延びていく生活の知恵なのだろう。ここに出てくる兵士たちは、殺人鬼のけだものでなくごく普通の人々アメリカ市民。戦争を遂行する政治家もごく普通の人々。この恐ろしさをこの映画で味わってほしい。