湯山昭

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湯山昭
10

甘い香り漂うメロディーに心が躍る

湯山昭の曲は、子供から大人まで幅広い年代の音楽家に愛されている。
ひょっとすると湯山昭の曲と聞くと、子供が発表会で弾くイメージが強いかもしれないが、湯山昭は「自分が子供だった頃を思い出しながら作曲をしている」というのだから、無理もないだろう。実際、童謡愛唱歌や、バイエル・ブルグミュラー程度の難易別の曲集も作られ、ピアノを始めたての子供が習得することにより、豊かな響きや幅広い感性を身につけることができるとされている。
ピアノ曲集「お菓子の世界」は、それぞれの曲にお菓子の名前のタイトルがつけられ、音楽を聴くとそのお菓子の味、食感、口に広がる甘さが連想できてしまう。「バウムクーヘン」という曲は、明るく爽快なメロディーから始まる。途中に出てくるスタッカートの音は、まるで「まだ?まだ食べちゃダメなの?」とごねる子供のようだ。最後の和音の連続で構成される旋律は、舌の上で覚えた甘くずっしりしたバウムクーヘンの口あたりへの感動が表現されているように感じられる。
花火が打ち上がったような、心の底から溢れる幸福感、というような音だ。
軽やかでおしゃれな香りが漂う旋律とコロコロと変わるフレーズや調の変化、彼の作風として特徴的な、大胆なのにさりげない表情の入れ替わりが聴く人の心を魅了し、ときめかせてくれる。
そんな心躍る気分-湯山昭の魔法にかかれば、すっかりあなたも彼の音楽の虜になるだろう。