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賛否両論の結末!ヨルムンガンドで戦争について考えよう。
武器商人と少年兵という日本ではなじみの薄い存在を主人公にすえた高橋慶太朗のコミック。
作品は少年兵である主人公のヨナ(ジョナサン・マル)目線で語られる。その生い立ちから、武器を憎みながらも手放せないという背景がある。
もう一人の主人公ココ・ヘクマティアルはヨナの上司であり護衛対象で、謎の多い人物。武器商人でありながら、戦いをやめられない人間に絶望している。世界を渡り歩いており、ある計画をくわだてている。
ココとヨナを含めた私兵メンバーは『ひとクセもふたクセもある』存在で個性が強く、魅力的である。それぞれのやり取りはセンスにあふれ、読んでいて非常に面白い。メンバーの来歴やココの私兵となるまでの詳細は、作中にてあっさりとした形で語られる。良い意味ですっきりとしており、冗長さゼロの作品と言える。
商売敵や顧客らの他に中央情報局(CIA)も加えながらのガンバトルが多い物語は実にテンポがよい。
そんな中で、武器と人間と戦争。世界平和の実現を問う作品。
読後にココの計画をありとするか否かを誰もが改めて考えるだろう。
基本的に巻頭で『ヨルムンガンド』の独白が入るが、『ヨルムンガンド』の意味は後半まで不明。そして、意味が理解できる瞬間が爽快であり、秀逸な構成の良作。