40年を経て本当の完結を見た
「ベルサイユのばら」というと40年も前に描かれた少女マンガであり、宝塚歌劇やアニメ、映画と様々なメディアミックスが展開された原点です。
作者の池田理代子氏がどうしても描いて残したいとの意向で、原作の隙間を埋めるようなスピンアウトや「ベルばら」リアルタイムより後に様々な研究から解明された新しい事実を盛り込んで、より一層物語の世界を膨らめたものを描いてくださいました。14巻にして「ベルばら」は本当に終わったのです。本編9巻の結末はさらりとその事実のみを描いていたものでしたが。いかにしてそこに辿り着いたのか、というところをある人物を通して描いているのです。池田理代子氏は、「ベルばら」のあとで「栄光のナポレオン(旧題:エロイカ)」を描いていましたが、「ベルばら」からの流れをくむキャラクターたちが登場します。市民としてフランス革命をつぶさに見て、その大嵐のような世界を生き抜いたのはロザリーとその息子フランソワでした。ロザリーは、実在の人物から名前を取っています。本編の最後でマリー・アントワネットが投獄されたコンシェルジェリー牢獄で彼女の世話をした女性がロザリーというのだと、池田氏が参考にしたツヴァイク作のマリー・アントワネットの伝記に記述があったのです。池田氏はロザリーという名の少女を登場させ、ポリニャック伯爵夫人や首飾り事件のジャンヌと見事な絡みを描き、そして、息子にオスカルのミドルネームからフランソワと名付け、その彼女らがたどりついたスウェーデンで見た時代の終焉と未来とは、どんなものだったのか。「ベルばら」を知っている方には是非ご一読いただきたいし、これまで読んだことのない方には是非最初から一気読みして頂きたいです。最近話題になった中野京子さんの『怖い絵』などとご一緒に楽しむとより一層リアルに浮かび上がるものがありますよ。