空の青さを知る人よ

空の青さを知る人よ

『空の青さを知る人よ』とは、長井龍雪監督、CloverWorks制作による日本のアニメーション映画である。本作はアニメ制作チーム「超平和バスターズ」が手がけた秩父三部作の完結編に位置付けられており、埼玉県秩父市を舞台とした、過去と現在をつなぐ不思議な初恋の物語を描いている。第23回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品。
両親を亡くし、姉のあかねと二人で暮らす高校生の相生あおい(あいおい あおい)は、進路への葛藤を抱えながらベースの練習に明け暮れる日々を送っていた。そんなある日、あおいの前に13年前の姿のまま現れた金室慎之介(かなむろ しんのすけ)、通称「しんの」と、かつての輝きを失い現実に疲弊した31歳の慎之介が同時に現れることで物語は大きく動き出す。あかねへの思いを抱えたままお堂に閉じ込められた生霊のしんのと、あかねを支えるために夢を諦めた過去を持つ慎之介、そして姉への負い目を感じつつ東京への憧れを募らせるあおい。それぞれの後悔や願いが音楽祭を背景に交錯し、やがて土砂崩れという事件を経て、登場人物たちは自分の心と向き合い、未来へと踏み出していく。タイトルは作中の寄せ書きにある「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」という言葉に由来しており、限られた場所で生きることの尊さと、他者を思う深い愛が繊細なタッチで描かれている。

7fmimiyのレビュー・評価・感想

空の青さを知る人よ
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現実をまだよく知らない、将来の夢を持っている過去の自分に会えたら、あなたはどうしますか?

アニメ制作チーム「超平和バスターズ」が描く、3作目の青春群像劇です。登場人物それぞれの感情に共感できる場面が多く、10代の頃に感じる将来に対する不安や周囲への不満がとても丁寧に表現されています。特に主人公、相生あおいの家族に対する葛藤は高校生にとって繊細な感情からくる誰にでも起こりうるものだと感じます。
主人公は幼いころに両親を亡くし、姉と二人っきりで生活をしてきた。姉は自分のために、将来の夢、恋愛、若者が経験をしてみたい青春を諦めてきた。自分のせいで姉は自由に生きられない。人生を奪ってしまっている。自分がいなくなればいいのではないか。これらの感情は、不安定な10代が抱える心の闇そのものです。
そして、それらの思いを解消することができるのは、やはり「言葉」です。劇中、登場人物達のそれぞれの思いを、伝えるべきである人に向けた「言葉」がすべて印象的です。さらに、この作品は過去への苛立ちを抱えたまま生きる大人にも向けられたものだと感じています。自分が思い描いていた、将来の夢の実現に近づいているにも関わらず「あと少し」手が届かない。その「あと少し」がどうにもならないほど大きな壁であるのを知ってしまったとき人は歩みを止めてしまうのでしょう。
これらの思いも自ら、動き出さなければ何も変えられない。何も動き出さない。それを教えてくれるのは壮大な空の青さを知っている過去の自分なのではないか。学生の子達よりも、仕事で悩み、今を生きるのに必死な社会人の方々にぜひ見てもらいたい一作です。