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現実をまだよく知らない、将来の夢を持っている過去の自分に会えたら、あなたはどうしますか?
アニメ制作チーム「超平和バスターズ」が描く、3作目の青春群像劇です。登場人物それぞれの感情に共感できる場面が多く、10代の頃に感じる将来に対する不安や周囲への不満がとても丁寧に表現されています。特に主人公、相生あおいの家族に対する葛藤は高校生にとって繊細な感情からくる誰にでも起こりうるものだと感じます。
主人公は幼いころに両親を亡くし、姉と二人っきりで生活をしてきた。姉は自分のために、将来の夢、恋愛、若者が経験をしてみたい青春を諦めてきた。自分のせいで姉は自由に生きられない。人生を奪ってしまっている。自分がいなくなればいいのではないか。これらの感情は、不安定な10代が抱える心の闇そのものです。
そして、それらの思いを解消することができるのは、やはり「言葉」です。劇中、登場人物達のそれぞれの思いを、伝えるべきである人に向けた「言葉」がすべて印象的です。さらに、この作品は過去への苛立ちを抱えたまま生きる大人にも向けられたものだと感じています。自分が思い描いていた、将来の夢の実現に近づいているにも関わらず「あと少し」手が届かない。その「あと少し」がどうにもならないほど大きな壁であるのを知ってしまったとき人は歩みを止めてしまうのでしょう。
これらの思いも自ら、動き出さなければ何も変えられない。何も動き出さない。それを教えてくれるのは壮大な空の青さを知っている過去の自分なのではないか。学生の子達よりも、仕事で悩み、今を生きるのに必死な社会人の方々にぜひ見てもらいたい一作です。