監督リドリー・スコットが多層的に造形したミステリーSF大作『ブレードランナー』
『ブレードランナー』は1982年のSF映画で、監督はリドリー・スコット、脚本はハンプトン・ファンチャーとディヴィッド・ピープルスです。
出演はハリソン・フォード、ルトガー・ハウザー、ショーン・ヤング、エドワルド・オルモス。
本作は作家フィリップ・K・ディックが1968年に発表した小説『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』を緩やかに原案にしています。
映画の舞台は2019年のディストピア的な未来のロスアンジェルス。
「レプリカント」として知られる人造人間が、市場を独占するタイレルコーポレーションによって遺伝子工学的に「製造」されて宇宙植民地での労働のために供給されています。
ロイ・バッティ(ハウザー)に率いられたレプリカントのグループが地球に逃亡すると、疲れ果てた警官リック・デッカード(フォード)は彼らを狩り出す命令をいやいやながら承諾しました。
研究者は本作公開時から映画の分析を始めていました。
1996年には、作品製作に関する詳細を「解剖」する研究が現れました。
また、別な研究では、『ブレードランナー』における哲学的・心理学的問題や文学的影響が分析されています。
たとえば、複数の文学テキスト(聖書、古典、近代文学)をコラージュして画面を構成していることを指摘することで、映画のサイバーパンク的な、ディストピア的な要素を摘出している研究があります。
というように、多様な解釈を許す「懐の深い」作品として仕上げられたのは監督リドリー・スコットの力量であるかもしれません。