僕たちは希望という名の列車に乗った

sariaのレビュー・評価・感想

僕たちは希望という名の列車に乗った
9

いろんな「世界」の狭間を行き来する学生たちの話

ラーズ・クラウム監督の「僕たちは希望という名の列車に乗った」を見た私の感想は、「ノンフィクション小説を一気に読んだくらいの達成感と疲労感」でした。
物語は冷戦中の東ドイツという何もかもが監視の元にある社会で、自由を求めるあるクラスの学生たちの葛藤を描いたものです。
タイトルでも書いたように、とにかくこの作品にはいろんな「世界」の狭間に立たされた学生の葛藤劇が主軸になっています。
冷戦下の東西、自由か管理か、政府の指示に従うか否か、亡き父親を名誉に思うか恥と思うか、そして友達を裏切るか家族を裏切るかなどなど…。
とにかくクラスの全員が何かしらの2つの世界の間に強制的に立たされ、そこでどんな行動に出るのかがこの作品の魅力ポイントです。
個人的には最後の自白シーンが一番印象的でした。
誰もいない教室で自分の席につくように言われた学生たちが、自分自身のこと、家族のこと、クラスでの立ち位置のことなどを誰もいない教室で政府の高官に話している様子は「みんなの前では言えないけれど、本当はどう思っているのか」を代弁しているように感じました。
言論が統治されていた時代背景もあってか、ここでの各学生たちの言葉にはどれも重みがあり、それがこの映画を見終えての達成感と疲労感につながっているような気がしました。