犯罪「幸運」 / Gluck

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犯罪「幸運」 / Gluck
10

実話に基づいて書かれた原作は世界的ベストセラー

現役弁護士フェルディナント・フォン・シーラッハが実話に基づき書いた短編集『犯罪』をドイツの女性監督ドリス・デリエが映画化。邦題は『犯罪「幸運」』。
マケドニアの内戦で深い心の傷を負い1人ベルリンに渡り娼婦となるイリーナ。ある日、車に轢かれて怪我をしてしまうが不法滞在のため逃げるように去ろうとする。この車を運転していたのが弁護士で念の為と言ってイリーナに名刺を渡す。
イリーナは路上に立っている毎日の中で犬を連れたホームレスの青年カッレと出会う。2人は間もなく恋に落ち、小さな本当に小さな幸せを感じるようになる。
イリーナは彼との生活のために部屋を借り、仕事も部屋に客を呼ぶことにする。カッレも髪型を変え顔中のピアスを外し配達の仕事を手に入れる。ところが突然不運で不幸なことが起きて思わず口を押さえて小さく叫んでしまう。
それでもお互いを支えあいながら生きていこうと奮闘する2人。このまま頑張って2人で穏やかに小さな幸せを守って生きてほしいと思っているとまたもや不運と不幸が2人を襲う。
カッレはイリーナを愛するが故にある行動に出るがこれがまた得策とは言えない。追い込まれた2人はどうなってしまうのか。緊張感が途切れることなく続き、2人の幸せを願うあまり最後まで前のめりで観てしまう。
変なタイトルだなと思っていたが最後には納得する。平和ボケしている日本人には理解できないこともあるかもしれないが、世界のどこかではこんなにも悲惨なことがあり、世界のどこかではこんな風に優しさと強さも持って生きている人たちがいる。
幸運というとラッキーな棚ぼた的なことを想像しがちだが今作は少し趣きが違う。彼らには手にしていい幸運だと思えたし、そう思わせる健気さがあった。
ラストシーンは意見が分かれているが、私個人はお互いがお互いを強くし、全てを乗り越え「自分たちで選んで」あの場所に一緒にいると思っている。人生でベスト10に入る素晴らしい映画。