怨霊(鬼)の力を使って都を支配しようとする陰陽師と都を守ろうとする陰陽師の戦い
時は平安時代、都はそこに住む人々の様々な思い(怨念、妬みなど)で渦巻いていた。恋愛のもつれや未練から、鬼になっていく女性らを主人公の源宏昌や安倍晴明が綺麗な心でその人々を救ってゆく。
現代も平安も、時代が変わっただけで人々の心に巣食う鬼は現代でも存在しているんだと思う。
安倍晴明が唱える呪文、操る妖術、闇を切り裂いてそこに光が射すような爽快感がある。都がどうなろうと関係ないと割り切っていた安倍晴明が、都のために人々を救おうという源宏昌に動かされ、立ち上がり協力し合う2人の友情も見どころである。
安倍晴明は、当時病んでいた人々の精神を救う精神科医の役割も果たしていたのではないだろうか?自分が思いを寄せた相手が、自分を捨て、他の相手に心が移る、それに我慢できなくなり、相手のことを呪う人々を癒すことができるのは、自分のことを本当に好きでいてくれる心の綺麗な誰かしかいない。愛情に包まれれば、人は異常な精神状態から立ち直り、狂気から生還して正気にものを判断できるようになる。
現代でも安倍晴明は必要であり、その役割を果たしている人もいるのではないだろうか。
狂言師である野村萬斎の舞や音楽も美しい。
生活に忙殺され、心の余裕がなくなった時、この作品を見てみるのも良いのではないだろうか。