実写映画にもなった原作漫画。大人になった今振り返りたい若さと懊悩!
とある事情でマトモな社会生活を送れなくなったヒキニートな海崎新太28歳。
夜道で出会った謎の青年に、高校生活を一年やり直してみることを提案されて…。
わずかなSF・ファンタジー要素が物語の隅々に響かせながら、リアリティを失わない青春ドラマです。
馬鹿々々しく思える青年の提案を、主人公と一緒に猜疑心たっぷりに読み進める序盤、あっと驚く展開に、がっちり心掴まれる中盤。
そして、最初から用意されていた『一年』という区切りの意味。
結末に向かって集約していくストーリーは、むかし若者だった大人たちこそを、ほろ苦いような、甘酸っぱいような既視感に引きずりこんで進みます。
このお話は、主人公が『若さ』を再び学び直す過程をそのまま読者に追体験させ、深く読み込むほどに、生きることの苦しさ・悲しさ、そして喜びを感じさせてくれます。
数えるほどしかいない登場人物はひとり一人が沢山の異なった人生のデフォルメでもあります。
新しい出会いがあり、そこに隠された背景が現れてくるたびに、「こんなことがあった、あんなこともあった」と、じんわりとこころに沁みてくるのです。
実写映画にもなりました。年齢不詳の謎の青年を千葉雄大さんが演じていて、好演でもあります。
しかし原作の読み込み要素であるとある登場人物が描写されていない点が、原点要素です。
実写映画を観てつまらなく感じた方も、原作漫画を味わってほしい。
年齢が上なほど、響く物語です。