こんな漫画家はもういない。ブッダよりすごい手塚治虫先生
この作品の魅力は、ブッダの物語そのものというよりも、
この壮大な物語を漫画で伝えようとした手塚先生のすごさがわかるような作品です。
まず主人公であるブッダの物語が始まるのは3巻からです。1、2巻の主人公は別の人物でブッダとは直接的には関係性を持ちません。
ただし、その主人公を取り巻く環境に、今後ブッダとの関係性がでてくるので、1、2巻が序章だといえます。
ブッダが仏教を広めようとするところまでが「ブッダ」と考えがちですが、
もう少し深く、違う話からこの物語を始めることで、なぜ「仏教という教えが必要か」ということがわかるようになる構成です。
この辺が普通の漫画とは違う、手塚先生のすごいところだと思いました。
先生はブッダのエピソードを始める前に、読者に理解して欲しいことがありました。
それは、当時のインドなどに存在していた厳しい身分制度による人権の侵害です。
生まれながらの身分から、脱することのできない宿命や差別についてが厳しく描かれています。
その他にも飢餓、病害、自然災害など、こうした厳しい環境で当時の人たちは生きぬいてきたことを知る必要があったのです。
現代人に問いかける、人はどう生きるべきかという哲学的な内容だと思います。