さくらん

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さくらん
8

吉原遊郭を舞台に一人の花魁の生きざま

写真家蜷川実花の初監督作品ということで、華やかな色彩と映像美という点ではうならせるものがあった。身体を商売道具とする花魁に本当の恋愛は成立するのか?永遠の課題だと思う。お客は金を払って女の体を抱きに来る。そこに性欲はあってもこの人でなければという思いはない。その残酷な現実をきよ葉は身を持って味わうこととなる。情夫を本気で愛してしまい、他の女に渡したくなくて相手を殺そうとする花魁。手練手管で男を喜ばせる術を知り尽くし、体を使って男の気持ちを操ろうとする花魁。女性の本当の幸せって何なのだろう?そんなことを考えてしまった。好きな男に自分からは逢いに行けず、金を持ってその男が店に来るのを待つしかない運命。そんな世界で生きてきたからこそ、せっかく身受けの話が決まり女郎地獄から抜け出せるチャンスを得たのに、死罪になるのを覚悟で部屋から抜け出し、つかの間の自由で桜を見に行くという行動に出たのだろう。見受けの話も相手が本気で妻にしようと思っているのに、きよ葉本人は本当に惚れているわけではない。身受けして奥方になってもそんな相手との夫婦生活、残りの人生本当に幸せと思えるのだろうか?あまりにも悲しい運命その中で生きていくしかない女郎という職業。苦界から這い上がれるという女郎にとっては最大のチャンスを棒に振ってしまうその運命感。やはり私は男性であってオスにはなれない。華やかな花魁の世界の光と影、そんなものをまざまざと見せられた気がした。けだるい濃厚な映画を見た後は、毒気にあてられた気持ちを癒すべく、性欲のない恋愛をしたいとつくづく思った。