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その生物の細胞に入り込み、見かけは全く変わらないが中身はその異性体になっているという恐ろしい生物と南極の極地に閉じ込められた人間たちとの戦い
とにかく面白い。最初はなぜ犬をあんなに恐れるのか不思議だったが、人気がなくなった犬小屋でその生物が正体を現す。そのなんとも不気味で気持ちの悪い事。身体のすべての部分が命を持ち、血までが動き回る。恐ろしいのは知らないうちに異性体に乗っ取られても、傍目から見てもわからないことだ。南極観測隊員たちも一人、また一人と異性体に乗っ取られてゆく。誰も信じられない恐怖。その中で主人公は誰が異性体に乗っ取られたか見つけ出す方法を考える。血液検査だ。人間の血は熱を当ててもただ死ぬだけだが、異性体の血は熱から動いて逃げ出す。その方法で乗っ取られたものを見つけ出すときの不気味さ。最後まで息もつかせぬ展開で見終わってしまった。音響効果も抜群で、ひとを不安にさせるような単調なテンポが淡々と流れる。最後に生き残った主人公と異性体に支配されているのかわからない観測隊員との会話が、将来を想像させる。火が消えればまた冬眠する。恐ろしい。非常によく書かれた脚本だと思う。一番怖いのは次々と繁殖していく異性体ではなく、お互いを疑って疑心暗鬼に陥り、人間同士で起こる殺し合いである。やはり人間は人間の手によって自滅していくことだろう。