カムイ外伝

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カムイ外伝
10

優れたシノビでありながら掟に逆らいヌケニンとなったカムイの生きざま

常人とは違う特別な訓練を受けた忍び、その組織の掟を嫌い抜け忍となったカムイのもとには、カムイを殺すため、忍びの世界から次々に刺客が送り込まれる。
信じる事が即、死につながる非情な世界で何度も死にかけながらもカムイは生き延びてゆく。
すべてが追手に見えて猜疑心の塊となり自分に敗れて鬼相になって自ら命を絶った抜け忍も居る。
だがカムイは違った。生死のギリギリのところで自分は死を覚悟した行動によって忍びの信頼まで得ていく。
並々ならぬ強さと体術に裏付けられた自信、忍びでありながら領主も動かす行動力と知恵、身分制度や藩命など世の中の不条理が当たり前のように行われていた江戸時代だからこそその生きざまは光り輝く。
転々と居場所を変え風のように流れてゆくカムイ、行く先々で出会った人たちとの間に様々なドラマがある。
安全な明日が来るという現代、もちろんリスクはあるが自分から危険の中に飛び込んでいかない限り委に血を落とすリスクは昔に比べはるかに少ない。
生きてゆく中で何が大切かいろいろな意味で考えさせられた作品だった。
人間の業、そんなものも顔を出す。壮絶な毎日の生活からカムイの言動は人を動かしてゆく。
密告して仲間を裏切り金を得ていた男が、カムイの犬は死ぬまで犬だが人間は生まれ変わることがあるかもしれないという話を聞き体を張ってカムイを助け死んでゆく。
カムイを信じた人は見違えるように生きがいを見いだすが次々に追手の手にかかって命を落としてゆく。
人は一生の間にいろいろな出会いを経験する。
ずっと記憶に残り続ける出会いもあればすぐ忘れ去られていく出会いもある。
少しでも人間の善意を信じて、希望という光を胸にともし今より少しでも前へ、少しでも良くなる方向へそんな思いを抱かせた作品である。