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実力と存在感のある歌声
2000年度グラミー賞の最優秀新人賞を受賞した経歴を持つ、実力あるシンガーソングライター、シェルビー・リン。
そのときのスピーチで「ここまで来るのに、13年と6枚のアルバムを必要とした。」と本人が語ったように、地道な音楽活動を経て成功した人です。
シェルビー・リンの音楽にはカントリー音楽の素朴さ、ブルースの渋み、ジャズの洗練、ロックの強さなど、様々なジャンルのエッセンスが感じられます。
1999年のアルバム『I Am Shelby Lynne』では、ポップスやロックの色が濃く現れ、より多くの人々にアプローチできるような曲調に。
このアーティストの作品の中で最もパワーのあるアルバムとなっています。
一方で、非常にシックで洗練されたアルバムとなったのが、2008年の『Just a Little Lovin'』。
敬愛するダスティ・スプリングフィールドが歌ってきた往年の名曲をカバーした作品集です。
生楽器の演奏が心地良く、控えめに奏でられ、シェルビー・リンのボーカルの存在感を引き出しています。
コーラスが重ねられることもなく、素のままの歌声を聴かせているのですが、それによって、込められた感情がダイレクトに伝わってきます。
素晴らしいシンガーであること、そしてダスティ・スプリングフィールド作品への愛が感じられました。
『Just a Little Lovin'』のような作風が一番合っているような気がしますが、シェルビー・リンのリリースするアルバムは毎回異なるカラーとなっていて、同じスタイルを繰り返しません。
そこが面白くもあり、残念でもあります。