90年代のゲットーをラップしたHIP HOPの伝説
HIP HOPの伝説となり、アイコンとなった2パック。
過激でスキャンダラスな面と、繊細で文学的な面が同居した、人を惹きつける魅力のあるスターです。
最も、彼のスキャンダラスな面というのは、何も自ら進んでトラブルを起こしているわけではないのだけれど、巻き込まれてそうなってしまったということが多いようですが、まだまだゲットー(貧民街)の治安が改善されない90年代のアメリカにおいて、彼自身が危険な領域にいたことは紛れもない事実でした。
そんな危ない環境にいた2パックが体験したことやラップしたことは、私たちの目や耳には過激に映りますが、ゲットーに住む人々にとっては普通に起こり得ることだったのでしょう。
人種差別、ドラッグの蔓延、銃を手にするギャング…。
"Changes"で2パックがラップした描写には、苦難を生きた人だからこその洞察と、心からの願いを感じます。
ロサンゼルスを中心とする西海岸と、ニューヨークを中心とする東海岸のHIP HOPシーンが対立する状況下で、2パックは西海岸のトップアーティストとなり、東海岸に対する攻撃心を激しくしていったわけですが、皮肉にも2パックはニューヨーク出身でした。
生まれ故郷と敵対しなければならないということは、どのような心理状態だったのでしょうか。
その悲しみの反動として、よりタフに、より過激に振る舞っていた部分も、もしかしたらあったのかもしれません。