11年後、私たちは

raspberryのレビュー・評価・感想

11年後、私たちは
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あるあるの連続!共感できて癒やされました

タイトルにもあるように、11年間つきあったカップルのお話です。決してうまくはないんだけど、表情とか、言いたいことは伝わってくる素朴な絵とか、全然キラキラしていないストーリーが非常にリアルで、「あるある!」と共感してしまいました。

主人公は11年つきあった彼氏と別れて、踏んだり蹴ったりな思いをするのですが、「そういうことってあるよな」と、現実で体験するエピソードの連発です。こういった日常で起こる理不尽なこと、不愉快なことを書いてもらったおかげで、「自分だけじゃないんだな」と、何となく癒やされました。そして、そんな主人公の様子を見ていて、浮気した彼氏のことがめちゃくちゃ憎くなったし、嫌なヤツだと思ったのですが、彼氏の方の視点から描かれたエピソードを読んでいると、彼氏側の気持ちにも感情移入してしまっている自分に気づき、ハッとさせられました。別れっていうのは、どちらか一方に否があるということはなく、それぞれに事情があるものだということは、頭ではわかっていても、なかなか納得しづらいものです。しかし、この漫画を読んでそれが腑に落ちるという体験をしました。地味に見せて、なかなかすごい漫画であると思います。

思い出のシーンの中の、つきあいたての頃の主人公はロングヘアで可愛い感じに描いてあるのに、11年つきあい続けた現在のシーンではボブカットで、表情とかもあまり女子力が高くない感じになっているのが、なんだか切なかったです。そんな主人公の職業の設定が、企業の中のデザイン部というところもやけにリアルでした。