1960年代香港のジメジメとした湿度と閉鎖感が体験できます。
2人の禁断な関係性を表しているかのような主に赤と緑を使った怪しくも鮮やかな色遣い、そこに日本映画とはまた違ったジメジメとした窮屈な湿度が常に伝わってくる作品。
部屋の写し方、2人の会話の時のカメラが覗き見ている様な位置で観ている側にリアリティを与えている。
同日に同じアパートに引っ越してきた2組の夫婦。お互いの妻、夫の姿が明らかにならない描写は、お互いの夫婦間の関係がいかに冷めているか、離れているかが想像できる。
お互いの夫、妻が頻繁に仕事で家を空け、孤独な時間を過ごす2人。隣人として会話をしていくうちに徐々にお互いの相手同士が不適切な関係にあるとお互いで分かった時、どちらも気持ちはお互いの相手に対しての愛からくる嫌悪であり、この運命に腹立たしさすら覚える。だからこそ2人は一線を超えまいと努めていた。
しかし後半、別れの練習をした後のタクシーの中でのチャンが言う「帰りたくない」のセリフとモーションのみで2人は確実にこれまでではない関係に踏み入ったと分かる。
それからはエピローグ的にその後の話しが進む。
チャン夫人の前半チャウに話す「独身だったら幸せだった」の言葉には誰もが経験したことのあるような複雑な想いが含まれていて突き刺さる。
縛られた環境の中、孤独、不満から思いもよらない欲が生まれてくることだってあるのだ。