ミッション:8ミニッツ

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ミッション:8ミニッツ
10

現実とパラレルワールドが絡み合う、複雑で切ないハッピーエンド。

米軍の大尉であるコルター・スティーブンスは目覚めると、自分が列車に乗っていることに気づきます。
目の前の女性が親しげに話しかけてきますが、彼女が誰だか全くわかりません。
混乱するコルターは、その列車がシカゴ行きであることを知ります。
コルターは自分の顔が、ショーン・フェントレスという教員のものになっていると気づきます。
動揺するコルターを落ち着かせようとする女性。その時、二人の乗っていた列車が爆発炎上します。

やがて目覚めたコルターは、自分の置かれている状況を徐々に知ることになります。
彼は列車爆破テロ事件の犯人を捜すため、事件に巻き込まれた乗客の、死の直前の8分間の意識の中に入り、あらゆる手立てを使って手がかりを掴むという任務を与えられたのでした。

…という衝撃的な展開で始まり、好奇心をそそるストーリーがテンポ良く進んでいく、2011年公開のSFサスペンス映画です。
理不尽にも思われるほどの過酷な任務を与えられる主人公。
何度も失敗を繰り返すその姿に、見る者は思わず手に汗握って声援を送りたくなります。
また主人公は物語の最初から、「父親と連絡を取らせてくれ」とさかんに訴えているのですが、終盤になってその切ない理由が明かされます。
その伏線が明らかになった時、この主人公がアフガンに派遣された兵士だという特殊な事情にあるとしても、ある程度年齢を重ねた人ならば、その姿に自分を重ね合わせる人は多いかも知れません。

物語の結末は、おそらくは「こうであって欲しい」と見る側が願うような、ある意味ハッピーエンドと呼んでもいいものになっています。
しかし、「ヒーローの活躍で悪い奴が逮捕されてみんな幸せ」という簡単なオチでは決してありません。
悲しい現実がある一方で、パラレルワールドでの幸福は続くという、実体はないけど幸福は確実に存在する、という複雑なエンドです。
それでも、見た後には切なさと清々しさが混じり合い、そして確実に「見て良かった」と感じさせてくれる、上質な作品に仕上がっています。