Scatman John / スキャットマン・ジョン

8pIolantheのレビュー・評価・感想

Scatman John / スキャットマン・ジョン
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ダイバーシティが叫ばれる現代でこそ聴いて欲しい

90年代にデビューし、一世を風靡したジョン・ポールラーキンことスキャットマン・ジョンを覚えているだろうか?
世代ではなくても『カラオケで100点を取ることが難しい曲』としてうっすらと知っている人も多いだろう。
中には彼にインパクトだけの一発屋というイメージを持っているかもしれない。
しかし、それは間違いだ。
スキャットマン・ジョンの真髄はその歌詞にこそある。
「 Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop(びーぱっぱっぱらっぽ)に意味なんてあるの?」と笑わないで欲しい。
インパクトのあるスキャットに隠れてしまっているがここは一つ歌詞カードを眺めながら彼のラップに耳を傾けて頂きたい。
1stアルバム『Scatman's world』は『愛に溢れる国を想像しよう、人々が労わり合う時間を持つ国、皆が平等である国、皆が真実を語る国…そんな魔法のような国はどこに?と思っても遠くを見る必要は無い、それは君の心の奥深く 一番大きな夢と一番暖かな願いの間に見つかるだろう』というフレーズから始まる。
唯の奇麗事に聞こえるかもしれないが、彼は吃音症という発声障害を持つマイノリティだったことを留意して欲しい。
現在でこそインターネットやSNSがあり、マイノリティ同士は繋がり合えるが、ジョンの生きた時代はそれすらなく、マイノリティ達は孤独の中苦悶するしかなかったのだ。
結果、ジョンはドラッグやアルコールに溺れるようになるまで追い込まれてしまうのだが、その様な苦悶や逆境の中で培われた価値観が彼の曲には込められているのだ。
よく彼を楽観主義と見なす方も多いが私はそうは思わない。
2ndアルバム『Everybady Jam!』は歌詞の内容を読み解くに1stアルバムのアンチテーゼとして作られている。
「君の掲げるスローガンは世界をより良くすると言うが止めておきな、自分のことすら出来ない奴が世界をどう変えると言うんだい?」このフレーズは『Shut Your Mouth And Open Your Mind』という歌詞の一節だがこういったリアリストの目線こそ彼の真の姿だろう。
残念ながら1stアルバム程売れなかったのでリアリストとしてのスキャットマンの姿はあまり知られていない。
『24時間テレビ』などマイノリティは純真無垢で美しいものとメディアは言うが決してそうではなく、社会への不満や怒りを抱いているという事実を見て見ぬふりをしてはならない。
スキャットマンの曲はこうした社会に一石を投じるメッセージに溢れている。